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03/18/2013

講演 美術における血 (その2)

神戸大学大学院人文研究科准教授・美術史家 宮下喜久朗氏の講演で印象深かったのは、「東洋人と西洋人では、血に対する考え方がまったく違う」ということ。西洋では、血は当たり前、キリスト教の重要なモチーフ。キリストが流した血は、信仰上大切なものであり、キリストの血、赤ワインならOKと考えられてきました。キリストは原罪をひっかぶって死んだ。キリストが流した血によって、人類は救われた。むごたらしいほどありがたい。一方、東洋では「血なんかみたくもない」。
ローマのある聖堂には、洗礼者ヨハネの斬首シーン、サロメを描いた絵があるそうですが、ここでよく結婚式が行われています。日本人ならこんな残酷な絵に囲まれて結婚したいとは思わないでしょう。
16世紀、南蛮時代に日本に来た宣教師は、日本人は血を嫌うからと、十字架に張りつけられたキリスト像を隠し、もっぱらマリア像を見せて布教したそうです。

次から次に、流血の名画が紹介されました。戦闘、処刑、殉教・・・これらは西洋美術の物語表現に頻出します。
キリストの血(聖血)・・・ワイン←最後の晩餐/聖杯(カリス)信仰/晩餐式(聖体拝領、ミサ)の起源/十字架上で流された血・・・神秘の泉/聖なる心臓(聖心)への信仰
聖人と殉教の血 /洗礼者ヨハネの斬首/殉教図サイクル/聖プラクセデス

ナポリには1,000年前の殉教者・聖ヤヌアリウスの血の現物が残っており、毎年「血の奇蹟」というイベントが行われています。ガラスの瓶に入った凝固血を振ると、溶けてくるという不思議な現象です。大衆の前で公開されます。講演中にビデオを見ましたがたしかに固体が液体に変わりました。血が溶けない年は、ベスビオス火山が噴火するなど大災害の兆候とされます。現在では、血の中に存在する物質が反応して液体に変化するのでは?と言われているそうです。

「美術における血」というテーマの講演を通じて、思いがけない西洋と東洋の違いを知りました。(完)

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