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11/30/2018

読書「時空を超えて江戸暮らし 不便ですてきな江戸の町」

江戸時代の庶民の生活や風俗について、幅広い知識が楽しく学べる、実にユニークな小説です。近世古文書学習者も時代小説愛好家も必見。

永井義男、柏書房、2018.5.5

江戸風俗研究家・作家が描く奇想天外の小説。ひょんなことから江戸時代にタイムスリップできる入口を見つけた古文書講座講師とその生徒、まず江戸での生活に備えて準備を始めます。町を歩いても怪しまれない和服・草履、頭はスキンヘッド、しゃべる言葉は当時の実際の会話が活写されている式亭三馬の「浮世風呂」「浮世床」などをお手本に勉強です。古銭商で寛永通宝(一文、四文)や小判などを購入(銭さしという紐に寛永通宝を百枚通したものが百文。実際は九十六枚)、パンツの代わりにふんどし、江戸時代の衛生環境に免疫がないため抗菌目薬・胃腸薬・下痢止め、さらに吉原体験に備えた準備まで。そして、いよいよ江戸にタイムスリップです。そこは不便ですてきな町だった・・・

この本のいたるところに、先週一般公開に出かけてきた国際日本文化研究センター(京都)や国会図書館が所蔵する古文書(絵)を駆使した江戸時代の情報・知識が詰め込まれています。「江戸のカレンダー」(江戸時代の大晦日は12/31ではなかった!)、「江戸時代の時刻」(よく明六ツは午前六時と解説してあるが、実際は不定時法なので夜明けが正しい)、「江戸の通貨制度」(旅には金貨・銀貨を用意し、必要に応じて、両替業務を行っている旅籠屋などで銭貨に替える。最初から銭を持ち歩くと重くて持ち運べない)、「旅の装い」、「お歯黒」(武士階級も庶民も、女性は結婚すると歯を黒く染めた。この点、テレビドラマ・時代劇映画の時代考証は間違っている。もっともお歯黒女性の不気味さを考慮しているのかも。当時の結婚は、つづらをしょった仲人が、おはぐろ壺と酒を持って来て、三々九度の盃を交わせば成立)、「蕎麦屋」、「旅籠屋」、「江戸の風呂屋」(もともと混浴、天保の改革で混浴厳禁に)、「便所」(床板に穴をあけただけ、下に桶か壺)、「糞尿は商品」、「江戸の呉服屋」(絹織物=呉服、綿織物・麻織物=大物。下級武士や庶民が買い物をしたのは古着屋)、「江戸の寿司」、「各種の舟と船宿」、「吉原細見」(吉原遊興のガイドブック)、「吉原」、「駕籠と駕籠屋」、「女中と下女」、「長屋の入口と台所」、「江戸の本屋」・・・などなど。

P.S こんな話も。

江戸時代にタイムスリップした男が花魁道中を見物している場面です。「先頭の花魁はおそらく18くらいだろう」「え、未成年なんですか」「この時代、未成年の考え方はないからな。女を年齢ごとに分けて、13,4~20歳を新造、20~32,3歳を中年増、32,3歳~を年増と呼んだ」「20歳を過ぎるともう中年増なんですか」「女は13歳ぐらいから適齢期で、20歳ぐらいまでが娘盛りだった。女が一番若々しく、美しいときがすなわち遊女も全盛といえよう」

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